日本の GHS ラベル:JIS Z 7253 の表示項目と安衛法・化管法・毒劇法の違い
「GHS 対応ラベルを作ってほしい」という依頼で最初に確認するのは、どの法令の対象物質かということです。日本では 1 つの規格(JIS Z 7253)に 3 つの法律が乗っており、法律ごとに対象物質と義務の強さが違います。この記事では規格の表示項目、3 法の違い、海外規制との差、印刷時の注意点を順に整理します。
この記事の要点
- 根拠規格は JIS Z 7253:2019(国連 GHS 改訂 6 版準拠)。ラベル・作業場内表示・SDS の 3 つを規定。
- 安衛法はラベル表示と SDS 交付が義務、化管法は SDS 義務・ラベル努力義務、毒劇法は独自の表示義務。
- 表示項目は 8 つ:製品名・絵表示・注意喚起語・危険有害性情報・注意書き・供給者情報・その他の情報(+法令固有表示)。
- 寸法表はない(判読可能であること)。EU・中国には容量別の寸法表があるので輸出時は要確認。
1. JIS Z 7253:2019 の表示項目
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 製品の特定名 | 化学品の名称、混合物は成分名 | SDS の名称と一致させる |
| 絵表示(ピクトグラム) | 黒いシンボル、白地、赤い菱形枠 | 国内専用の場合は黒枠も可とする運用がある |
| 注意喚起語 | 「危険」または「警告」 | 両方ある場合は「危険」のみ |
| 危険有害性情報 | H コード相当の文 | 物理化学的危険性 → 健康有害性 → 環境有害性の順 |
| 注意書き | P コード相当の文 | 安全対策・応急措置・保管・廃棄 |
| 供給者を特定する情報 | 名称・住所・電話番号 | 国内の連絡先 |
| その他国内法令で定める事項 | 毒劇法表示、消防法表示など | 該当する法令ごとに追加 |
| SDS 参照の案内 | 「SDS を参照」の旨 | 推奨 |
2. 3 法の違い
| 労働安全衛生法(安衛法) | 化管法(PRTR 法) | 毒物及び劇物取締法(毒劇法) | |
|---|---|---|---|
| 観点 | 労働者の安全衛生 | 環境への排出・移動の管理 | 毒物・劇物の取り扱い規制 |
| 対象物質 | 表示・通知対象物質(政令指定、段階的に拡大中) | 第一種・第二種指定化学物質 | 毒物・劇物に指定された物質 |
| ラベル表示 | 義務 | 努力義務 | 義務(「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」等の独自表示) |
| SDS 交付 | 義務 | 義務 | 義務(毒劇法上の情報提供) |
| 所管 | 厚生労働省 | 経済産業省・環境省 | 厚生労働省 |
実務上のポイント:1 つの製品が 3 法すべての対象になることは珍しくありません。対象法令を成分ごとに洗い出し、最も厳しい義務を満たすラベルを 1 枚作るのが基本です。安衛法の表示対象物質は毎年追加されているので、成分表の見直しを年次で行ってください。
3. 海外規制との主な差
| 日本(JIS Z 7253) | EU(CLP) | 米国(HazCom 2024) | 中国(GB 15258) | |
|---|---|---|---|---|
| GHS 改訂版 | 改訂 6 版 | ATP で更新(改訂 8/9 相当) | 改訂 7 版(一部 8 版) | 改訂 4 版(GB 30000) |
| 言語 | 日本語 | 販売国の公用語 | 英語 | 中国語必須 |
| 緊急連絡先 | ラベル上は不要(SDS に記載) | 不要 | 不要 | 24 時間緊急電話を記載、輸入品は中国国内番号 |
| 寸法規定 | なし(判読可能) | 容量別の表あり | なし(判読可能) | 容量別の表あり |
| 特有の追加表示 | 毒劇法・消防法表示 | 供給者ブロック、公称量 | 出荷日に紐づく適用 | SDS 参照文言 |
輸出用に海外の表を参照する場合は、英語の解説 GHS label requirements compared と GHS label minimum size にまとめています。
4. 印刷時の注意点
- 赤枠は赤で:熱転写プリンターは黒しか出ないため、赤枠をプレ印刷したラベル用紙に黒を重ねるか、カラーラベルプリンターを使う。
- 用紙:溶剤や薬品に触れる容器には PET または PP の合成紙、耐溶剤の粘着剤。紙ラベルは液だれで読めなくなる。
- 屋外・ドラム:耐候性のフィルム基材、樹脂系リボンで熱転写、または ラミネート。
- 絵表示の大きさ:規格上の寸法はないが、貼付後に離れた位置から判読できることを実物で確認する。
- 改訂管理:SDS を改訂したらラベルも改訂し、版数と改訂日を管理する。
5. 作成手順
- 成分ごとに安衛法・化管法・毒劇法の対象かを確認する。
- 混合物の分類を確定し、絵表示・注意喚起語・危険有害性情報・注意書きを決める。
- 供給者情報、SDS 参照、法令固有表示(毒劇法など)を加える。
- 容器の材質と環境に合う用紙・粘着剤・印刷方式を選ぶ。
- 試し貼りをして判読性を確認してから量産する。
UN 番号から GHS ラベルの下書きを作る
UN 番号を入力すると絵表示・注意喚起語・H/P 文が自動で入ります。供給者情報と法令固有表示を日本向けに調整して仕上げてください。 ツールを開く →
参考資料
本記事は以下の一次資料に基づいています。実務では最新版をご確認ください。
- 日本産業標準調査会(JISC)— JIS Z 7253 GHS に基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法
- 厚生労働省 — 化学物質のラベル表示・SDS 交付(GHS)
- NITE — GHS 関連情報
- UNECE — Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS)
- UNECE — GHS pictograms (official artwork)
- EUR-Lex — Regulation (EC) No 1272/2008 (CLP)
- ECHA — Labelling and packaging under CLP
よくある質問
日本の GHS ラベルは何を根拠に作りますか?
JIS Z 7253:2019「GHS に基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」です。国連 GHS 改訂 6 版に対応しており、労働安全衛生法・化管法(PRTR 法)・毒劇法の 3 法がラベル表示と SDS 交付の根拠法令として JIS Z 7253 に準拠した方法を求めています。
安衛法・化管法・毒劇法ではラベルの義務がどう違いますか?
対象物質と義務の範囲が異なります。安衛法は労働者の安全衛生の観点から、表示対象物質(政令で指定、順次拡大)についてラベル表示と SDS 交付を義務づけます。化管法は環境への排出管理の観点から、第一種・第二種指定化学物質について SDS 交付を義務、ラベル表示を努力義務としています。毒劇法は毒物・劇物について「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示など独自の表示義務があります。1 つの製品が複数の法令の対象になることが普通で、その場合はすべてを満たすラベルにします。
海外向けのラベルと同じものを日本でも使えますか?
そのままでは使えません。日本語表記が必要で、表示項目の順序や供給者情報の書き方、法令固有の表示(毒劇法の表示など)が異なります。絵表示(ピクトグラム)・注意喚起語・危険有害性情報・注意書きの中核部分は共通化できますが、供給者ブロックと法令固有部分は日本向けに作り直します。
ラベルの大きさに決まりはありますか?
JIS Z 7253 は具体的な寸法表を持たず、判読できる大きさで表示することを求めています。EU の CLP 規則や中国の GB 15258 のような容量別の寸法表はありません。実務では EU の表(3 L 以下 52×74 mm など)を目安にする企業が多く、輸出品ではその市場の表に合わせます。