リチウム電池ラベルの基礎:UN3480・UN3481・UN3090・UN3091 の違いと表示サイズ
リチウム電池を発送するとき、最初に決めるのは UN 番号です。ここを間違えると、包装基準・マーク・ラベル・書類のすべてがずれ、運送会社の受付で差し戻されます。幸い、判断は 2 つの質問に集約できます。
この記事の要点
- 質問 1(化学):リチウムイオン(充電式)→ UN3480/UN3481、リチウム金属(一次電池)→ UN3090/UN3091。
- 質問 2(形態):電池単体 → UN3480/UN3090、機器に同梱または組み込み → UN3481/UN3091。
- 航空では 2022 年以降、単体電池(UN3480/UN3090)にセクション II はなく、最低でもセクション IB(クラス 9 ラベル必要)。
- マークは 100×100 mm(縮小 100×70 mm)、電話番号は不要。2026 年から UN3481 同梱品にも 30% 充電率。
1. 4 つの UN 番号を一覧で
| UN 番号 | 化学 | 形態 | 代表的な製品 |
|---|---|---|---|
UN3480 | リチウムイオン | 電池単体 | 交換用バッテリーパック、モバイルバッテリー、電動自転車の別売バッテリー |
UN3481 | リチウムイオン | 機器に同梱/組み込み | ノート PC、スマートフォン、カメラ、電池入りの電動工具 |
UN3090 | リチウム金属 | 電池単体 | CR123A・CR2032 のまとめ発送、塩化チオニルリチウム電池 |
UN3091 | リチウム金属 | 機器に同梱/組み込み | 計測器、センサー、一次電池入りの医療機器 |
2. 質問 1:イオン系か金属系か
リチウムイオンは充電式(Li-ion、LiPo、LiFePO4 など)。容量は Wh(ワット時)で表し、2.7 Wh・セル 20 Wh・電池 100 Wh といったしきい値が要件を左右します。
リチウム金属は一次電池(充電不可)で、金属リチウムを含みます。CR2032 のようなコイン電池や CR123A、産業用の塩化チオニルリチウム電池が該当し、容量はリチウム含有量(g)で表します(セル 1 g、電池 2 g が主なしきい値)。金属系は規制が厳しく、単体のリチウム金属電池は旅客機での貨物輸送が禁止です。
「充電式」表示や Wh 表示があればイオン系、「充電禁止」と g 表示があれば金属系です。両方を同じ箱に入れる場合は UN 番号ごとに分けて申告します。
3. 質問 2:単体か、同梱か、組み込みか
- 単体(UN3480 / UN3090):箱の中身が電池だけ。予備パック、バラのセル、そしてモバイルバッテリー。
- 機器に同梱(UN3481 / UN3091):電池と機器が同じ外装箱にあるが、電池は装着されていない。別売バッテリー付きの電動工具など。
- 機器に組み込み(UN3481 / UN3091):電池が機器に装着されている。ノート PC、スマートフォン、医療モニターなど。
「同梱」と「組み込み」は UN 番号が同じでも包装基準が異なります(IATA のリチウムイオンでは同梱が PI 966、組み込みが PI 967)。
4. セクション IA・IB・II
| セクション | 対象 | 包装の表示 | 書類 |
|---|---|---|---|
| IA | 大型電池(イオン > 100 Wh、金属 > 2 g)や数量超過 | クラス 9 リチウム電池ハザードラベル、正式輸送品名と UN 番号 | 危険物申告書 |
| IB | 小型電池の単体輸送。2022 年以降は航空の UN3480/UN3090 単体品すべて | クラス 9 ラベルとリチウム電池マーク | 危険物申告書 |
| II | 小型電池の同梱・組み込み(UN3481/UN3091)で数量制限内 | リチウム電池マークのみ | 申告書不要(航空運送状に記載) |
2022 年の変更を見落とす例が今も多い:IATA 第 63 版で PI 965(UN3480)と PI 968(UN3090)のセクション II が削除され、2022 年 4 月 1 日以降、単体電池の航空輸送は最低でもセクション IB です。セクション II が残るのは UN3481 と UN3091 だけです。
5. リチウム電池マークのサイズと表示
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 標準サイズ | 幅 100 mm × 高さ 100 mm 以上 |
| 縮小サイズ | 100 mm × 70 mm。包装が標準サイズを貼れない場合のみ |
| ハッチング枠 | 赤、標準サイズで幅約 5 mm 以上 |
| 図記号・UN 番号 | 黒。電池群と炎の図記号、その下に UN 番号(複数併記可) |
| 電話番号 | 任意。航空は 2027 年 1 月 1 日以降記載不可、海上は 2026 年 12 月 31 日まで使用可 |
マークは外装の一面に、底面を避け、角をまたがず、テープで覆わない位置に貼ります。赤が橙やピンクに見える印刷は不適合とみなされるため、赤枠をプレ印刷したラベル用紙に黒を熱転写するか、カラーラベルプリンターを使います。
6. 2026 年の 30% 充電率ルール
IATA DGR 第 67 版(2026 年 1 月 1 日発効)で、UN3481 の「機器に同梱」されたリチウムイオン電池(セルまたは電池が 2.7 Wh 超)も、定格容量の 30% 以下(表示容量 25% 以下)で輸送することが義務になりました。UN3480 単体品は 2016 年から 30% 以下が必須です。組み込み品は基本テキスト上は推奨ですが、航空会社の個別規定で適用されることがあります。充電率は BMS の表示か開放電圧から測定し、記録を出荷書類と一緒に保管してください。
7. 受付で止まる典型的なミス
- モバイルバッテリーを UN3481「組み込み」として申告する。
- UN3480 と UN3090 を同じ箱に入れて 1 つのマークで済ませる。
- UN3480 を航空でマークだけ貼り、クラス 9 ラベルを付けない(旧セクション II の運用)。
- 80×80 mm など縮小しすぎたマーク、赤枠が細すぎるマーク。
- UN3480 や UN3481 同梱品を 30% 超の充電率で出荷する。
UN 番号が決まったらマークを作成
UN3480・UN3481・UN3090・UN3091(併記も可)を選び、100×100 mm か 100×70 mm を指定して、SVG または 300 DPI PNG をダウンロードできます。 ツールを開く →
参考資料
本記事は以下の一次資料に基づいています。実務では最新版をご確認ください。
- IATA — Lithium Batteries: Dangerous Goods Regulations guidance
- UNECE — UN Recommendations on the Transport of Dangerous Goods, Model Regulations
- ICAO — Technical Instructions for the Safe Transport of Dangerous Goods by Air
- IMO — IMDG Code (International Maritime Dangerous Goods Code)
- US DOT PHMSA — Lithium Battery Safety
よくある質問
UN3480 と UN3481 の違いは何ですか?
どちらもリチウムイオン電池です。UN3480 は電池単体で輸送する場合、UN3481 は機器と同梱(同じ外装箱に入っている)または機器に組み込まれている場合です。化学的には同じで、梱包の形態によって UN 番号と適用される包装基準、充電率の要件が変わります。
モバイルバッテリーは UN3480 と UN3481 のどちらですか?
UN3480 です。モバイルバッテリーはケースや USB 端子があっても「電池そのもの」であり「機器」ではないため、単体の電池として扱われます。航空輸送では IATA のセクション IB または IA、充電率 30% 以下、クラス 9 のリチウム電池ハザードラベルが必要です。
リチウム電池マークの最小サイズはいくつですか?
幅 100 mm × 高さ 100 mm が標準です。包装が小さくてその大きさを貼れない場合に限り、100 mm × 70 mm まで縮小できます。旧規格の 120×110 mm と縮小 105×74 mm は前版の国連勧告に基づくもので、経過措置の終了時期を運送会社と確認してください。
マークの電話番号は今も必要ですか?
必須ではなくなりました。国連勧告第 22 改訂版で電話番号の要件が削除され、航空(ICAO/IATA)では任意、2027 年 1 月 1 日以降は記載できません。海上(IMDG コード)では 2026 年 12 月 31 日まで電話番号入りのマークを使えます。今後作成するデータは電話番号なしにしておくのが安全です。